飛騨高山の家具展示会レポート|今後の家具業界への想い
毎年、岐阜県・飛騨高山で開催されている家具の展示会に行ってきました。
塩田家具でも、少量ではありますがいくつか飛騨のブランド家具を取り扱っています。
私自身、展示会に足を運ぶのは約2年半ぶりでした。
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今回、特に印象に残ったのは「キタニジャパン」

キタニジャパンは、かつてフィン・ユールの家具製造ライセンスを持っていたほどの高い技術力を持つメーカーです。
その中でも、特に感動したのが──
イブ・コフォード=ラーセンが1956年にデザインした「エリザベスチェア」。

この椅子は、イギリスのエリザベス女王がコペンハーゲン滞在中に購入されたことから名づけられたそうです。
繊細な曲線を生み出すために、コンマ以下の精度で削り出し、強度の限界を攻めているという話を聞き、ものづくりへの執念のようなものを感じました。
2年半ぶりに訪れて思ったこと(ここから少し主観です)
2年半前にこの展示会を訪れたときは、まだインテリア業界に入りたてで、すべてが新鮮に見え、とても感動したのを覚えています。
そこから日々、北欧の家具や照明に触れる中で、自分の中の価値観が大きく変わっていきました。
そんな状態で今回、改めて飛騨高山の家具を見て思ったのは──
「日本の家具業界って、このままで大丈夫なんだろうか?」という不安でした。
もちろん、これはあくまで私個人の感覚ですし、北欧の家具が好きなだけかもしれません。
ただ、飛騨で見た家具の多くからは、北欧インテリアに感じるような強い魅力はあまり感じませんでした。
文化の違いと、家具が引き継がれるということ

北欧では、家具が親から子、そして孫へと引き継がれていく文化があります。
長く使えるだけでなく、「引き継ぎたくなるほどの価値」があるということです。
その価値は、修理を繰り返してでも使いたくなるような魅力から生まれているのだと思います。

一方で日本ではどうでしょうか?
私自身、実家で使っていた家具を引き継ぐことはありませんでしたし、そもそも引き継ぎたいとも思いませんでした。
これは私個人の感覚かもしれませんが、周りの知人たちも似たような考えでした。
家具を引き継ぐという文化そのものが、まだ日本には根づいていないのかもしれません。
(もちろん、地域や家庭によっては違うと思いますが)
文化の醸成と、これからの家具づくり

日本と北欧では、市場規模も歴史も異なります。違って当然です。
でもだからこそ、「良い家具を次世代へ引き継いでいく」ための文化の醸成が必要だと強く感じました。
若い人が良い家具を買い、その良さを実感し、次の世代に引き継いでいく──
そんな循環が、日本の家具文化を豊かにしていくのではないかと思います。
そして、そのためには家具そのものが「ちゃんとカッコ良く」なければいけません。
今回の展示会では、そう感じられる家具にはあまり出会えなかったというのが正直な感想です。
否定したいわけではありませんが、少しだけ焦りのような気持ちを抱きました。
飛騨高山は、日本が誇る家具産地です。
だからこそ、これからも日本の家具を牽引していってほしい。
そしていつか、北欧家具にも引けを取らないような、日本独自の美しさと価値を持った家具が生まれていくことを願っています。