CH293|Sofa
材質
Hans J. Wegner, 1962
ソファでありながら、骨格が見える

ソファという家具は、ともすれば構造が見えなくなります。
木枠やスプリングは張地の中へ収められ、私たちが目にするのは柔らかな外形だけになることが少なくありません。
CH293は、その反対です。
三つの座クッションと三つの背クッションを支えている木製フレームが、はっきりと外へ現れています。
アーム、脚、座枠、そして背面のスラット。
ソファを支えるために必要な部材を隠さず、それ自体を造形として成立させる。
1962年にハンス J. ウェグナーがデザインしたCH293には、彼の家具に繰り返し現れる、非常に誠実な考え方を見ることができます。
三人掛けというより、三つの座る場所

CH293の座面を見ると、一枚の大きなクッションではなく、三つの独立したクッションによって構成されていることが分かります。背もたれも同様です。
このことは、見た目以上に重要です。
大きな一枚の面としてソファをつくるのではなく、一人分の座る場所を三つ並べる。
そう考えると、CH293がどこか椅子に近い印象を持っている理由が分かります。
ウェグナーは生涯に数多くの椅子を手掛けましたが、ソファにおいても、人と家具との関係を「一人がどのように座るのか」というところから考えていたのではないでしょうか。
三人掛けになっても、人間の単位を失わない。
CH293には、そんな設計の丁寧さがあります。
フレームがつくる水平と斜線

CH293を横から見ると、家具全体の性格がよく表れています。
床とほぼ平行に伸びる幅広のアームに対して、後脚は大きく後方へ傾斜しています。
水平線と斜線。
静かな部分と、動きのある部分。
この二つが同時に存在することで、低く落ち着いたソファでありながら、鈍重な印象になりません。
背面へ回ると、水平に渡された木製スラットが現れます。
通常であれば張地の中へ隠れてしまいそうな部分ですが、CH293ではあえて見せています。カール・ハンセン&サンも、CH292とCH293について、露出した木製フレームと接合部を意図的に見せることで構造と職人技を際立たせたシリーズと説明しています。
ここでは構造が、装飾の代わりをしています。
GETAMAから受け継がれたもの

CH293を含むこの家具群の背景には、ウェグナーとGETAMAとの長い関係があります。
2025年、カール・ハンセン&サンはGETAMAが保有していた家具ポートフォリオの一部を継承しました。公式発表では、ウェグナー、ナナ・ディッツェルらの作品を含むコレクションを将来に残していくことが、その目的の一つとして語られています。
カール・ハンセン&サンもまた、ウェグナーと長い歴史を持つメーカーです。
CH24やCH25、CH22をはじめ、ウェグナーの木工家具を現在まで生産し続けてきました。
そこへ、張り家具を得意としたGETAMAの系譜が加わった。
そう考えると、CH293の復帰は単なる一モデルの再発売ではありません。
ウェグナーの仕事を、椅子だけではなく、彼が考えた居間全体の家具へと広げて見る機会でもあります。
構造を見ることから、家具は面白くなる

CH293には、奇抜な形はありません。
目を引く装飾もありません。
それでも長く眺めていられるのは、そこに意味のない線がほとんどないからです。

なぜ脚がこの角度なのか。
なぜアームにはこの幅が必要なのか。
なぜ背面の木を隠さなかったのか。
なぜクッションをフレームと一体にしなかったのか。
家具を見ながら、一つひとつ理由を考えることができる。
CH293は、そういう家具です。
そしてウェグナーの家具の魅力は、案外、その「理由が見える」というところにあるのかもしれません。



