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クリスチャン・デル|カイザー・イデルをつくった金属職人

DESIGNERS / CHRISTIAN DELL / 1893–1974

フリッツ・ハンセンのカイザー・イデル フロアランプ

今回I’m waitingに設置する照明の一つが、カイザー・イデルのフロアランプです。デザインしたクリスチャン・デルは、銀細工を学んだドイツの職人でした。丸いシェードに目がいきますが、細い支柱や、高さを変える金具も気になります。椅子のそばで使うところまで見ていただきたい照明です。

ドイツで生まれたカイザー・イデル

カイザー・イデルは、現在フリッツ・ハンセンが扱っている照明です。そのためデンマークのデザインと思われることもありそうですが、もともとはドイツのカイザー社のためにつくられました。

「カイザー」はメーカーの名前です。「イデル」は、アイデアを意味する言葉と、デザイナーの姓であるDellを合わせています。つくった会社とデザイナーの名前が、一つの製品名に残っています。

デルは1893年生まれ。ハーナウで銀細工を学び、ワイマールではアンリ・ヴァン・デ・ヴェルデのもとで学んでいます。照明を描く前に、金属を加工する仕事を身につけていた人です。

今回の6580-Fも、使われているのは金属です。シェードはスチール、支える部分にはクロムメッキを施した真鍮が使われています。同じ金属でも、塗装された面と、光を反射する細い部品では印象が違います。全体の色だけでなく、その取り合わせも見ておきたいところです。

バウハウスで、金属加工を教えていた

デルがバウハウスの金属工房で働いたのは、1922年から1925年。まだ学校がワイマールにあったころです。役職は「Werkmeister」。工房で制作の技術を指導する立場でした。

同じ工房には、ラースロー・モホリ=ナジがいました。写真や絵画、光を使った実験でも知られる人で、金属工房では造形の指導を担当しています。新しい形を考えることと、実際に金属でつくれるようにすること。その両方を教える人がいたわけです。

マリアンネ・ブラントが金属工房に入ったのも、この時期でした。1924年にバウハウスで学び始め、モホリ=ナジの勧めで金属の仕事へ進んでいます。小さなティーポットや照明で知られるブラントと、カイザー・イデルのデルが、同じ工房にいた。製品をひとつずつ見ていると、なかなか気づかないつながりです。

工房では、手で金属を加工する技術を教えながら、工業製品として生産するための試みも進めていました。デルは、その実制作を支える側にいた人です。

バウハウスを離れてから

1926年、デルはフランクフルトの美術学校で金属工房を率いるようになります。このころから、メーカーのための照明デザインにも取り組んでいました。

しかし1933年、ナチスによって学校の職を解かれます。デルはドイツにとどまりました。

1936年のカイザー社のカタログには、テーブルランプ「6631 Luxus」が登場します。丸いシェードが大きく張り出した、カイザー・イデルを代表するモデルです。今回設置する6580-Fとは別のランプですが、シリーズの歴史をたどると、この名前が出てきます。

バウハウスで技術を教えていた時期と、カイザー社のカタログにこのランプが載った時期には、十年以上の隔たりがあります。デルの照明の仕事は、学校を離れてからも続いていたのです。

後年は銀製品の制作に戻り、1948年にはヴィースバーデンに宝飾店を開きました。ランプのデザイナーとして知った人ですが、銀細工は若いころの修業だけで終わった仕事ではありませんでした。

継ぎ目を見ると、動かし方がわかる

カイザー・イデルは、シェードを支える接合部分にも特徴があります。球状の継ぎ手を使い、光を向ける方向を調整できる構造です。シェード上部に入る「ORIGINAL KAISER-idell」の文字も、見分ける手がかりになります。

6580-Fでは、支柱の高さも調整できます。床からの高さは125〜135センチ。数字だけ見ると10センチの違いですが、椅子の高さや、手元で開く本の位置に合わせるときには、この調整が役立ちます。

フロアランプを選ぶときは、立って見た姿に加えて、椅子に座った位置からも見ておきたいものです。シェードの下から光源が見えないか。本に光を向けたとき、自分の手で影をつくらないか。椅子の横に置ける寸法でも、光の位置が合うかどうかは別に確かめる必要があります。

支柱の途中には高さを調整する金具があり、シェードの付け根には向きを変える継ぎ手があります。こうした部品が隠れずに見えているところにも、カイザー・イデルらしさがあります。

今回は、ホワイトの6580-F

I’m waitingには、6580-Fのホワイトを設置します。白く塗装されたシェードと、クロムの支柱を組み合わせたモデルです。

同じ場所に設置するカラヴァッジオ Opalは、ガラスを通して周囲にも光が広がります。カイザー・イデルは金属のシェードなので、開口から出る光を向けたい場所へ届けます。二つの照明を見比べると、素材による光の違いも分かります。

椅子に座ったとき、手元がどのくらい明るくなるか、シェードの下から光源が見えないか。ご自宅で使う場所を思い浮かべながら、見ていただければと思います。

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