PK61 引き算の美学

不要なものは一切ない

ポール・ケアホルムが1956年にデザインしたコーヒーテーブル「PK61」。
初めて目にすると、まず美しい石の天板に目を奪われるのではないでしょうか。
四角く切り出された天然石。ひとつとして同じもののない複雑な模様が広がっています。
一方、それを支えるのは、驚くほど細いスチールの脚という対比。
装飾をそぎ落としたとても簡潔なテーブルですが、天板を支えるフレームの構造にも見どころがあります。
木工職人がスチールに見出した可能性

ポール・ケアホルムは1929年、デンマーク北部のオスタヴロに生まれました。
15歳から家具職人見習いとして木工を学びはじめ、1952年にコペンハーゲンの美術工芸学校を卒業。
その後、家具の構造材としてスチールに強い関心を向けるようになります。
1950年代のデンマークでは、ハンス J. ウェグナーやボーエ・モーエンセンをはじめとするデザイナーが、木材の質感や伝統的な木工技術を生かした家具を発表していました。
一方、ケアホルムが関心を寄せていたのは、近代建築や工業材料による新しい家具の可能性です。
彼はスチールを単に強度が高く、加工しやすい材料として扱ったわけではありません。
木材や革と同じように、素材そのものの美しさを備えたものとして考えていました。
この点が、ケアホルムを理解するうえで重要です。
彼は職人技を否定して工業製品を選んだのではなく、工業材料にも職人技に匹敵する精度と美しさを求めたのです。
PK61の構造 — 4つの部材がつくる骨格
PK61の本当の面白さは、フレームにあると思います。
石の天板だと、のぞき込まないと分かりませんがガラス天板を選ぶとフレームの構造が見えることも魅力です。
4つの同形部材を組み合わせる
脚部は、同じ形状のスチール部材を4つ組み合わせた構造です。

それぞれの部材には、垂直に伸びる脚と、天板下に水平に伸びる部分があります。これらを互いに組み合わせ、ビスによって接合しています。
PK61では、天板を支える骨格そのものが造形の中心となっています。
スチールの接合部には黒いビスが見え、異なる部材をどのように固定しているのかが分かるようになっています。
このビスは、装飾ではなく、部材を結合するために必要なものです。
フレームは完全な左右対称ではない

天板は完全な正方形ですが、支えるフレームは中央で交わる単純な十字型ではありません。
4つの部材が直角に接合され、少しずつずれた位置でつながることで、天板下に幾何学模様が生まれます。
ガラス天板の場合には、その構造を真上から見ることができます。ガラス天板には構造を楽しめる魅力もあります。
天板は載っているだけ

PK61の天板は、フレームへビス留めする方式ではありません。
天板自身の重さ、つまり重力を利用して保持する構成です。
使ううちにずれてしまうこともありません。一般的にはこんな仕組みのテーブルないですよね。
ここも見事な設計だなと感じます。
PK22とともに生まれたテーブル
PK61がデザインされた1956年には、もうひとつ、ケアホルムを代表する家具が生まれています。
ラウンジチェアの「PK22」です。

低い座面と、薄い金属のフレームが特徴的なこの椅子は、現在もケアホルムの代表作として知られています。
PK61は、もともとそのPK22と組み合わせる家具として考えられました。
二つを並べてみると、共通するところがよく分かります。
どちらも金属を主要な構造材として使い、その上に革や石といった異なる素材を組み合わせています。
自然の石と、人が加工した金属

PK61には、大理石、御影石、スレート、ガラスなど、さまざまな天板の仕様があります。
同じ種類の石であっても、もちろん自然素材なので色や模様は異なります。そこも魅力的です。
一方、天板を支えるステンレススチールのフレームは、寸法や角度が精密に整えられた工業製品です。
自然がつくり出した不規則な模様と、人が設計した規則正しい構造。
PK61の面白さは、その対比にもあると思います。