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カイザー・イデル|銀細工師が考えた、暮らしの灯り

DESIGN NOTES 09 / Christian Dell

ホワイトのカイザー・イデル フロアランプ

椅子のそばに置く、一人分の光。

一冊の本を読むとき。ソファでコーヒーを飲むとき。部屋全体を明るくするのではなく、自分が過ごす場所にだけ灯りがあればいい。

そんな使い方を考えたとき、紹介したい照明のひとつが、カイザー・イデルのフロアランプ「6580-F Luxus」です。

金属のシェードと細い支柱で構成された、簡潔な姿。光を必要な場所へ向けられる機能を持ちながら、灯りをつけていない昼間にも、美しい佇まいを見せてくれます。

ドイツで生まれた、バウハウスの系譜を持つ照明

カイザー・イデルが生まれたのは、1930年代のドイツです。

デザインを手がけたクリスチャン・デルは、銀細工師として修業を積んだのち、ドイツの造形学校バウハウスで金属工房の主任を務めた人物でした。

バウハウスは、美術と工芸、建築、そして工業生産を結びつけようとした学校です。日常で使われるものを、美しく、合理的につくることも、その大きなテーマでした。

デルはバウハウスを離れたのち、照明のデザインに取り組みます。1936年にはドイツのカイザー社のカタログに、のちにシリーズの代表作となるテーブルランプ「6631 Luxus」が登場しました。

現在フリッツ・ハンセンが展開するカイザー・イデルには、当時のドイツで育まれたデザインの考え方が受け継がれています。

金属の部品がつくる、美しいかたち

カイザー・イデルを眺めていると、丸いシェードだけでなく、それを支える細かな金具にも目が留まります。

シェードを支える曲がったアーム。高さを固定するための金具。光の向きを変えるための継ぎ手。

どの部品にも役割があり、その構造が隠されることなく、照明全体の姿をつくっています。

特に6580-F Luxusでは、直線的な支柱と、先端で緩やかに曲がるアームとの組み合わせが印象的です。金属らしい精密さがありながら、シェードの丸みが全体の印象を和らげています。

シェード上部に刻まれた「ORIGINAL KAISER-idell」の文字も、このシリーズに受け継がれてきたディテールのひとつです。

装飾を加えるのではなく、使うための構造そのものを美しく整える。金属加工を熟知していたデルらしさが、よく表れた照明だと思います。

光の位置を、自分に合わせる

6580-F Luxusには、高さを125〜135cmの間で調整できる機構と、アームの回転機構が備わっています。シェードの向きも調整できるため、光を届けたい場所に合わせて使うことができます。

こうした機能は、実際に椅子のそばに置いてみると意味がよく分かります。

椅子の高さも、座る姿勢も、人によって異なります。読書をするのか、手元で作業をするのかによっても、欲しい光の位置は変わります。

そのとき、照明の位置や向きを細かく調整できることは、日々の使いやすさにつながります。

カイザー・イデルは、部屋全体を均一に照らすというよりも、必要な場所に光を届けることを得意とする照明です。

周囲の灯りを少し抑え、椅子のそばにだけ明かりを置く。そんな照明の使い方も、ぜひ試していただきたいと思います。

白いシェードとクロームの組み合わせ

今回ご紹介するのは、ホワイトの6580-F Luxusです。

白く塗装されたスチールのシェードに、光沢のあるクロームの支柱。金属を使った工業的なデザインでありながら、どこか軽やかな印象があります。

木製の家具や布張りのソファとも合わせやすく、曲線を持つ椅子の隣に置いても、互いの形を引き立ててくれます。

日中はシェードの丸みや金属の反射を楽しみ、夜には手元を照らす。

照明は点灯しているときだけを見るものではありません。家具と同じように、部屋に置かれている時間の長い道具だからこそ、明かりを消したときの姿も大切にしたいところです。

いつもの場所に、灯りをひとつ

良い椅子を選んだからといって、暮らしが突然大きく変わるわけではありません。

けれど、その椅子のそばにちょうどよい灯りがあることで、夕食後に本を開いたり、少し長く腰掛けて過ごしたりすることはあると思います。

家具や照明の価値は、そうした何気ない時間の積み重ねのなかにもあるのではないでしょうか。

カイザー・イデルのフロアランプは、一つひとつの部品の美しさだけでなく、そこで過ごす時間まで考えて選びたい照明です。

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