ドットスツール・ハイドットスツール

アントチェアとともに生まれた、小さな家具
ドットスツールが誕生したのは、1950年代初頭のデンマークです。
当時、アルネ・ヤコブセンはフリッツ・ハンセンとともに、成形合板を使った椅子の開発に取り組んでいました。
1952年に発表されたアントチェアは、木材を薄く成形する技術によって、軽さと強度、美しい曲線を両立させた画期的な椅子でした。
ヤコブセンは、その開発のためにフリッツ・ハンセンの工場へ何度も足を運び、製造技術や構造について研究を重ねていました。
ドットスツールも、そうした試行錯誤のなかでフリッツ・ハンセンとの協働によって生まれた家具です。
丸い座面に、細いスチールの脚。当初はアントチェアと同じ3本脚で製作され、1970年代に現在の4本脚へと発展しました。
余分な材料を使わず、構造をできるだけ簡潔にする。
その考え方は、ヤコブセンの多くの家具に共通していますが、ドットスツールほど分かりやすく表れたものも少ないかもしれません。
建築の中で考えられた、家具の使い方

1956年、ヤコブセンが建築から内装までを手がけたデンマークのルードブレ市庁舎が完成しました。
そのロビーの待合スペースには、ドットスツールが並べられていました。
面白いのは、スツールの背後に、座面と同じ丸い形の背もたれが壁に取り付けられていたことです。
背もたれのないスツールを、壁の前では背もたれのある椅子として使えるようにする。一方で、スツールそのものは自由に持ち運ぶことができます。
椅子を動かすために、背もたれまで一緒に運ぶ必要はありません。
少し変わった使い方にも思えますが、そこには空間を合理的に使おうとするヤコブセンの考え方がよく表れています。
小さな座面と、細い脚の美しさ
ドットスツールの座面は、直径約34cm。
少しだけ中央がくぼんだ丸い座面を、細いスチール製の脚が支えています。
簡潔な構造ですが、どの方向から眺めても美しいバランスがあります。
さらに、ドットスツールは重ねて収納することもできます。
必要なときには椅子として使い、使わないときには片付けておく。見た目の美しさだけでなく、こうした実用性まで考えられているところが、このスツールの魅力です。
使う場所を広げる、ハイドットスツール
ドットスツールのデザインを受け継ぎ、座面を高くしたものが「ハイドットスツール」です。
ヤコブセンは1960年代後半に背の高いスツールも開発しており、その考え方が現在の製品へと受け継がれています。
ハイドットスツールには、座面高65cmのカウンタータイプと、76cmのバータイプがあります。
キッチンカウンターや高めのテーブルに合わせて使えるようになり、脚には足を置くためのフットレストが備えられています。
特に3本脚のカウンタータイプでは、細いスチールパイプを三角形につないだ構造が印象的です。
暮らしの中の、小さな名作
良い家具というと、つい大きなソファやダイニングテーブルに目が向きがちです。
もちろん、そうした家具は暮らしの中心になる大切な存在です。
一方で、毎日の生活には、ほんの少し腰掛ける場所や、必要なときだけ使う椅子があることで、便利になる場面も少なくありません。
ドットスツールは、そんな痒い所に手が届くようなスツールかもしれません。