スワンチェア ホテルのためにつくられた椅子

椅子にはさまざまなデザインがあり、部屋の印象を特に大きく左右する家具だと思います。
たとえば木製の椅子が並ぶ空間と、布張りのラウンジチェアが置かれた空間では、どうでしょうか。
椅子には座るための機能だけでなく、空間そのものを形づくる役割もあるのだと思います。
デンマークの建築家アルネ・ヤコブセンが1958年にデザインした「スワンチェア」は、そんな家具と建築の関係を考えるうえで、とても興味深い一脚。
白鳥が羽を広げたような、美しくもちょっとかわいらしいフォルム。
この椅子は、もともとホテルの建築と一体になって考えられた家具でした。
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2026年10月1日 — 2027年3月31日
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SASロイヤルホテルのために生まれた椅子

スワンチェアが誕生したのは、1958年のデンマーク・コペンハーゲン。
アルネ・ヤコブセンが設計を手がけた「SASロイヤルホテル」のロビーやラウンジで使用するためにデザインされました。
1960年に開業したSASロイヤルホテルは、当時のコペンハーゲンで初めての高層ビルでした。
ヤコブセンは建物の外観だけでなく、内部の家具や照明、ファブリック、さらには細かな備品にいたるまで、その多くを自らデザインしています。
そうした仕事の中から、スワンチェアやエッグチェアをはじめとする数々の名作家具が生まれました。
ホテルの外観は、ガラスと金属のグリッドで構成された幾何学的な高層建築です。
言ってしまえばちょっと「冷たさ」さえ感じませんか?

一方、その内部にはスワンチェアをはじめとする柔らかな曲線の家具や、豊かな色彩のファブリックが取り入れられました。
スワンチェアは、ガラスと金属に囲まれたモダンなホテルの中で、人が腰を下ろし、会話し、くつろぐ場所をつくるために設計された椅子だったのです。
スワンチェアを実現した新技術
スワンチェアはどこをとっても曲線で構築された形状です。
左右に広がるアームは、名前のとおり白鳥のよう。
この特徴的な形を生み出すために、ヤコブセンは粘土や石膏を使い、彫刻家のように椅子の形をつくりました。
もともと彼は、セブンチェアのように成形合板(薄い木を重ねた素材)を使った椅子としてスワンチェアを構想していたそう。
しかし、当時フリッツ・ハンセンが導入した新しい成形技術「硬質発泡ウレタン」によって、
木製家具では難しかった自由な曲面を実現できるようになりました。
1950年代にこのような自由な造形を工業製品として成立させたことは、当時の家具づくりにとって大きな挑戦でした。


暮らしの中に、一人分の居場所を

リビングにはソファがあって、ダイニングにはテーブルと椅子がある。
それだけでも生活は十分にできますが、もう一脚ラウンジチェアを置くことで、過ごし方の選択肢が増えます。
ソファで並んで過ごす家族から、
少し離れた椅子に腰掛けて、本を読んだり、ひとり音楽を聴いたりする時間。
あるいは、誰かと向かい合ってコーヒーを飲む時間。
スワンチェアは、そんなインテリアの楽しみ方を教えてくれる一脚だと思います。